【本】指輪をはめたい
『指輪をはめたい』 伊藤たかみ (文春文庫)
自分を捨てた女を見返すため、30歳までに誰かと結婚しようと決めた主人公。
並行して付き合っていた三人の女性のうち一人に絞り、結婚指輪を購入。
だが、その日にスケートリンクで頭を打ち、数時間分の記憶を失う。
どうして自分がスケートリンクにいるのか、誰にプロポーズするつもりだったのか、どうしても思い出せない。
智恵か、めぐみか、和歌子か…。
30歳になるまで、あと数週間。
失われた記憶を取り戻すため、三人とデートを重ねていく。
自分が振った男の結婚に、興味を持つ女性はいないだろうし、結婚することが相手を見返すことになるという発想もよくわからない。
でも、30までに結婚することで、失恋の傷が癒え、女性不信が払拭されると信じる主人公に付き合って、その後の展開を見守ってしまう。
「自分が誰と結婚するつもりだったのか」という謎を解いていく過程で、主人公の結婚観が見えてくるのが面白い。
「随分身勝手なことを…」と思うのだが、それでも主人公を憎めないところが不思議。
誰と結婚したいのかを知ることは、自分がどういう人間なのかを知ることにも通じる。
謎解きに奔走した数週間で、主人公にも少しは自分のことが見えてくる。
それにしても、「誰にプロポーズするつもりだったのかわからなくなる」という設定がすごい。
どこに向かってるのかよくわからないまま、一気に読んでしまった。