【本】見とれていたい
『見とれていたい』 柴崎友香 (マガジンハウス)
「女の子が踊っているシーンがあるというだけで、もうその映画は合格!」と言ってしまうほど女の子の魅力に弱い柴崎さんが、自分が素敵だと思う女優やアイドルについて自由に語ったエッセイ。
私もかわいい女の子が大好きで、『青空感傷ツアー』という小説に美人に振り回されちゃう女の子が出てきた時、「この気持ちちょっとわかるなぁ」と思っていたのだけど、柴崎さんの女の子好きは私とは比べものにならない。
自由に好き勝手なことを言っている風なんだけど、見どころは鋭いし、丁寧に一人ひとりを追っていて、読みごたえがある。
批評する感じじゃなく、「自分の好きなものの魅力を他の人にも何とか伝えたい」って感じが漂っていて、読んでいて柴崎さん自身も魅力的な人なんだろうなぁと思った。
自分の心の動きに忠実で熱っぽいんだけど、自分の感じたものを分析して言葉に置き換える能力も高くて、「さすが作家さんだなぁ」と思った。
美女・日本代表として挙げられるのが松坂慶子なのだけど、この人は確かに魅力的だと私も思う。
映画でセクシーな役をやる時もあるし、お母さん的な貫禄を見せることもあるのだけど、少女っぽい可愛らしさを持っているところがいい。
松坂さんがおっとりと話し始めると、周りがぱぁっと明るくなるような気がする。
おっとりした喋り方に加え、体格がいいところにも惹かれてしまう。
松下由樹のがっちりした体型も私は好き。
柴崎さんが「イノセンス」について、「それはなんにも知らない「無垢さ」ではなくどんな不幸や悪にまみれても汚れないでいる強さみたいなものなんじゃないか」と言うのだけれど、わたしもその通りだと思う。
ドリュー・バリモアは『25年目のキス』を観た時にいっぺんに好きになってしまったのだけど、私はこの人が有名な子役だったということを全く知らなかった。
墜ちた子役の代名詞的存在だったらしく、9歳でお酒、10歳でマリファナ、12歳でコカイン、リハビリ施設を出入りして、自殺未遂も…という経歴の持ち主。
そんな苦しい時期を乗り越え、二十歳すぎ頃から映画で評価され始めたそうなのだが、私が知ったのはその後で、ラブコメで見せる彼女の表情には苦労の影なんて全く見えない。
不器用でひたむきで素直な女の子の役柄がよく合っていて、彼女がドジをしてシュンとしたり、些細なことですごく嬉しそうに笑うのを見ていると、「そんなに美形でもない」と思いつつ、ついついみとれてしまう。
彼女の警戒心のない笑顔を見ていると、幸せな気分になる。
もしかすると、辛い時にも自分を諦めてしまわなかった人っていうのは、他人を幸福にする力を持っているのかもしれない。
私は最近、自分を大事にできる人の中に、魅力的な人が多いような気がしている。
自分を甘やかしたり粗末にするのは簡単なのに、自分を大事にするのって本当に難しいからなぁ。
エッセイには60代、70代の女優さんも出てくるのだけど、女の子としての魅力というのは年齢とともに消えてしまうものではないんだなぁと思い知らされた。
映画や本の登場人物に、こんな風に年を取りたいなぁと思える人が出てくるとちょっと嬉しい。
巻末の「美女観測日記」も面白くて、私もテレビや雑誌で見かける女の子にもっと注目してみようと思った。
「午後の紅茶」のCMで、蒼井優が満腹であることを表わしているのかお腹をたたいてみせる仕草をするのだけど、その一瞬がすっごくかわいくて好き。
「一日だけ変われるとしたら…」とか「どんな顔でも選べるとしたら…」というありえない設定で妄想するのも楽しそうだ。
ちなみに柴崎さんは、一日だけ変われるとしたら「ニコール・キッドマン」になりたいそうだ。
どんな顔でも選べるとしたら、「りょう」がいいらしい。
私はどんな顔でも選べるとしたら、土屋太鳳がいい。
女優に注目して映画を観るという、柴崎さんの映画の見方が面白くて、紹介されていた映画を早速ツタヤディスカスのリストに登録してしまった。