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ツイッター @hyokofuji ミサ

【漫画】ひらけ駒!

『ひらけ駒!』1~4巻 南Q太講談社

今4巻まで出てて、まだまだ続く漫画だけど、すっごく面白い。将棋にはまった息子とシングルマザーの毎日を描いたもので、将棋のルールがわからなくても楽しんで読める。

小学四年生の宝くんは将棋に夢中。道場にも通っていて家でも将棋の本を読んだりネットで対戦したり。宝くんはまだ奨励会や研修会には入っていないので、この漫画を読むと《プロを目指す予定はないのだけど将棋を楽しんでいる人たち》 がどんな風に将棋を楽しんでいるのかが分かって楽しい。これは他の将棋漫画にはない楽しみかただ。

特に宝くんのお母さんは宝くんに釣られて将棋に興味を持ち始めたばかりで、ルールもよく分かっていない。そんなお母さんが宝くんの部屋を掃除する時に将棋カレンダーをめくって「今月は羽生さんだ」って言うところや、『聖の青春』を大切そうに読んでいるところがツボだった。うちにも将棋カレンダーがあるし、『聖の青春』は私の愛読書だ。

郷田さんの昔の写真を見てお母さんが驚くところで、笑い転げてしまった。私は今の郷田さんが大好きだけど、エッセイなんかで「絶世の美男子」と書かれたりしているのを読んで、首をかしげたことがあるのだ。『棋神』という将棋棋士の対局姿を収めた写真集があって、それを見た時に謎が一瞬で解けた。若い頃の郷田さんは確かに絶世の美男子!そんな経験があったから、お母さんの驚きっぷりを見て「わかる、わかる」と思ってしまった。私のような超初心者の将棋ファンにはたまらないポイントがいっぱいだ。

3巻でお母さんはアマチュア団体戦に出場。一勝したあとの昼休憩中に「なんか勝つかもって思ったら手ふるえちゃって」と仲間に話す。「ちょっとそれじゃ羽生さんじゃない!」と仲間から返されるところで笑ってしまった。登場する棋士が実在する棋士なので、こういう話がポンポン飛び出して面白い。

お母さんの将棋仲間の女性たちが将棋を始めたきっかけも様々。サラリーマンからプロ棋士になった瀬川さんの記事や自伝を読んだのがきっかけで将棋に興味を持った人もいれば、ハチワンダイバーなどの将棋漫画がきっかけで将棋を始めた人もいる。私も瀬川さんの自伝『泣き虫しょったんの奇跡』(瀬川晶司)は読んだことがあるし、羽海野チカの『3月のライオン』という将棋漫画が大好きだ。だからお母さんと将棋仲間の話を聞いているのが楽しかった。

その中の一人が「ビギナーズセミナーの講師が奨励会の人たちで、十代の男の子が自分のことを『先生』っていいながら教えてくれるのがたまらない」と言っていた。奨励会員なんて雲の上の人なんだから「先生」以外の何者でもないと思うのだけど、十代の男の子が自分で自分のことを「先生」って言うのは確かにちょっといいなって思った。私も将棋セミナーに行ってみたいな。

宝くんはすっごくかわいくて、この漫画を読んでいると「私も息子が欲しいなぁ」と思ってしまう。息子と一緒に将棋を楽しめるなんて最高に幸せだろうな。

4巻では宝くんのスランプを解消するためにお母さんが大活躍する。お母さんのキャラクターが飄々としているようで実は熱い人なのがいい。この親子のこれからが楽しみだな。早く5巻を読みたい!