小川洋子『沈黙博物館』
村の人びとの形見を老婆が集め、それを展示する博物館を建設する。
収集する形見の条件は、肉体が存在した証拠を最も生々しく記憶しているものであること。
〈死を完結させる品〉は、〈過去を閉じ込める箱〉ではなく、〈死後の世界を映し出す鏡〉。
友人でも家族でもない人間の形見を手に入れるのは難しい。
時には盗みに入ることも…。
博物館建設を依頼された技師は、形見収集に必要なものを〈老いた世界に対する敬愛の情〉であると語る。
死を扱いながら、感傷的にならず、生きた歳月の積み重ねを愛情をもって見つめる。
やっぱり、小川洋子はいいなぁと思った。