【本】漢方小説
『漢方小説』 中島たい子(集英社)
原因不明の震えに襲われ、救急車で搬送される、31歳の独身女性。
救急車の中で震えは治まったものの、診察を受けても原因がわからない。
その後、4軒回った病院でも「どこも悪くない。」と言われ…。
医者は検査の結果異常が見当たらないと「最近何かストレスを感じるようなことがありませんでしたか?」という愚問を発する。
震えが始まったのが元カレが結婚するというのを聞いた日だから、薄々原因はわかっているのだけれど…。
「昔の男が結婚したショックで体を壊しただなんて、ぜーったい、死んでも思いたくないっ!」
ということで、5軒目にたどり着いたのが漢方診療所。
腹診だけで、見事胃の辺りの震源地を言い当てた漢方医に主人公は参ってしまう。
若くて、笑顔が可愛くて、ソース顔。
しかも、ストレスについて何も聞いてこない。
「西洋医学では『この病気にはこの薬』ですが、東洋医学では『病気に罹っているあなたはこういう人だからこの薬』という治療をします」とのこと。
主人公は「あなたの病気はあなただけの病気」という発想に基づく東洋医学の奥深さにはまっていく。
主人公の症状が改善されていく過程にホッとしつつ、主人公と飲み友達の間でのゴタゴタも楽しく読めて、読んでてスッキリする小説だった。
主人公が訪れる『東京都薬用植物園』が本当にあるなら私も行ってみたい。