【本】空中ブランコ
『空中ブランコ』 奥田英朗
奥田英朗は面白い。
『イン・ザ・プール』が面白かったので、もう一つ読んでみた。
どっちも精神科医・伊良部が登場する。
『空中ブランコ』は五つの短編からなるが、一番面白かったのが『義父のヅラ』
強迫神経症の例と言えば普通〈鍵をかけたかどうか何度も確かめないと気が済まない〉というようなものだが、この作品の患者は義父のヅラを人前で剥がしたくてたまらない。
別に義父に恨みがあるわけではないのだが、明らかにヅラだとわかるその頭に誰もつっこまないのが不思議で仕方なく、つっこまない周りの人々に不信感さえ募っていく。
(なら、剥がしちゃえばいいのに、そうすれば症状はおさまるんだから)
と思うが、そうはいかないのが困ったところ。
ヅラを剥がす代わりに何か破目をはずした悪戯をすれば解決するのではないかと、患者と医師二人で実行した悪戯が面白い。
何度も笑ってしまった。
この代償行為は治療として効果があるのだろうか??
伊良部はヤブ医者なのか?名医なのか?
ろくな治療もせずドタバタ騒いでいるうちに、患者の問題は解決してしまう。
ただのバカなのかと思えば、時々まともなことも言う。
他人に安心感を持たせるのが得意なあたり、やはり名医なのかもしれない。
妙にセクシーな看護婦も気になる…。