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ツイッター @hyokofuji ミサ

【本】私たちには物語がある


『私たちには物語がある』 角田光代 (小学館) 

作家さんの読書案内はやっぱり面白いなぁと思った。 
角田さんはこれを感想文集というのだけれど。 
本に対する愛情が伝わってくる内容で、読んでいるとどの本も素晴らしく感じられる。 
こんな風に本を読んで、こんな風に感想を書けるようになりたいものだなぁと思った。 

角田さんは作家になったばかりの頃、周りの先輩作家や編集者から本をあまり読んでいないことを随分心配されたらしい。 
それで怖くなって、本を読んで文章を書く仕事は何でもかんでも受けると決めたそうだ。 
仕事をきっかけにして色んなジャンルの本を読んでしまおうと決意したらしい。 
私から見れば十分たくさん読んでいると思うのだけど、作家としてやっていく人たちはとんでもなく読んでいるんだろうなぁ。 

のんびりしているように見えて根性のある角田さんは、本に対する態度でも角田さんらしさを発揮する。 
本の魅力をギュッとつかんで自分の言葉でその魅力を伝えるという作業は、自分の中にちゃんと核のようなものがないとできないんだろうなぁと思った。 

引用はほとんどないんだけど、たまにしたと思うとその部分が的確だ。 
例えば、穂村弘の『にょにょっ記』 
「グミって食べたことないな、と思う。お菓子のグミ。揉んだことはあるけど。」(p.239) 
この三行を引いてくるところが素敵! 
これだけで、この本がすごく面白い本だということがよくわかる。 

自分が読んだ本も、読もうと思ってまだ読んでいない本も、知らない本も登場して、これからもっともっと本を読みたいという気持ちになってしまう。 

早速、開高健の『青い月曜日』を借りてきてしまった。 
本の魅力を伝えて、その本を他の人にも「読みたい!」と思わせてしまうのが、いい書評だと思う。