【本】おじさん図鑑
『おじさん図鑑』 なかむらるみ (小学館)
おじさんを観察して図鑑としてまとめたもの。文章も面白いけれどイラストもすごい!
50代以上の男性を見るとついつい「おじさん」ってひとくくりにしてしまうけど、おじさんも千差万別。こんなにバラエティに富んでいたのかと驚かされてしまった。それでいながら「確かにこんなおじさんいるいる!」って思えるリアルさがあって、読みながら何度も笑った。
「普通のスーツのおじさん」から始まって「お疲れのおじさん」「暇そうなおじさん」「ラフなおじさん」「スポーティなおじさん」などジャンル分けが面白い。
「ラフなおじさん」は確かに町の図書館なんかで見かけるし、私もつい最近までそんな格好で図書館に行っていた…。
「暇そうなおじさん」は後ろで手を組んで歩く。あまりに暇すぎて修行僧に話しかけてしまうおじさん。「めいわくだよ!」と思って声を出して笑ってしまった。
「スポーティなおじさん」の格好はかなり好き。競技用自転車に乗るような本格的なファッションじゃなくて、皇居の周りを走ってそうなファッション。キャップにTシャツ、短パンにスニーカー、高性能腕時計。リュックを膝において電車の中で文庫本を読んでいるイラストがたまらない。
私は辺見庸の影響で黒いキャップをかぶっているおじさんが無条件にかっこよく見えたりするのだけど、この本ではおじさんのキャップについても細かく分類されていて、それが面白い。ナイキのキャップがおじさんには人気があるらしく、それをかぶっている人が多いのだけど、著者がナイキをかぶっているおじさんに「その帽子、どうしたんですか?」と聞いたところ「え?もらったんだよ」と言われてしまったそうだ。ナイキキャップ人気の理由は謎のまま…。
私が一番ツボだったのは「愛読誌別おじさんチェック」。姫野カオルコの『よるねこ』を読んでいるおじさんを見つけるところがスゴイ。奇跡的だな。「サイケデリックな表紙が個性的な服装にマッチ。色々と常識にとらわれないものがお好みのようだ」というコメントに吹き出してしまった。(私は姫野カオルコが大好き)
おじさんを観察するだけではなく、おじさんとの交流もあって、カレンダーに自作の格言を記しているおじさんが登場したりするのが愉快でよかった。格言の中にはこんなものも。「死ぬ気で頑張れば死ぬぞ」。その通りだな…。
おじさん予想診断というのが付いていて、自分が将来どんなおじさんになるのか判定されるのだけど、私は「哀愁漂う真面目なおじさん」という結果が出た。「すでに完璧なおじさん!」って言われなくてちょっとホッとした。