There's a place where I can go

ツイッター @hyokofuji ミサ

【本】変愛小説集

『変愛小説集』 岸本佐知子編訳 (講談社) 

愛をテーマにした短編を集めたもの。といっても、恋愛ものとはちょっと違う。設定が風変わりなものばかりで、愛する対象がおかしかったり愛し方がおかしかったり。ユニークで奇抜なところを楽しむだけじゃなく、読んでいるとこのおかしな世界が私たちが素直にイメージする恋愛と本質的に似通っているように思えてきて、そこが一番の魅力なんじゃないかなと思った。知らない作家さんばかりで、こんなに面白い短編を書く人がたくさんいるんだなって思えるところも嬉しい。11の短編は全部違う作家さんの作品なのに、一冊を通して統一感があるところもスゴイ。私が一番気に入ったのはイアン・フレイジャーという人の書いた「お母さん攻略法」という短編。恋愛指南書の趣きで書かれているのだけど、狙うべき女性として自分の母親を設定しているところが面白い。ユーモラスなんだけどちょっとブラックな感じで気に入ってしまった。他の短編も木に恋をしてしまう人が出てきたり、妹のバービー人形と恋愛関係になる男が出てきたり、不思議な世界なんだけど全く抵抗なく引き込まれてしまった。