マイセン磁器の300年展
東洋陶磁美術館はもともと大好きなのだけど、今回の「マイセン磁器の300年」という展覧会は特によかった。
15世紀の大航海時代にヨーロッパに入った中国製の磁器が17世紀には東インド会社によって組織的に輸入されるようになった。
磁器は「白い金」とも呼ばれ、王侯貴族や富裕層の間で収集ブームが起こる。
そんな中、ザクセン選帝侯兼ポーランド王のアウグスト強王が自国での磁器製造に熱意を傾け、錬金術師ベットガーに磁器の製法を研究させる。
1709年に磁器の製造法が解明され、1710年には王立磁器製作所がアルブレヒツブルク城の中に建設された。
その後もヘロルトが色絵磁器の技法を生み出したり、ケンドラーが磁器彫刻の技術を完成させたりすることで、東洋の模倣から始まったマイセン磁器に独自性が加えられていく。
マイセン磁器の300年間にわたる変遷を国立マイセン磁器美術館所蔵作品を通して知ることのできる贅沢な展覧会だった。
二時間かけてじっくり見たのだけど、それでも一度では把握しきれないぐらい多くの作品が展示されていた。
関連書籍を読んだり、もう一度見に行ったりしたくなるような展覧会だった。
中国風人物図が描かれるシノワズリ(中国趣味)の瓶は、喫茶や娯楽を楽しむ人たちがモチーフになっているところが面白かった。
ヨーロッパ独自のモチーフとしてざくろの代わりの玉葱、不滅の花とされるムギワラギクが描かれるのも興味深い。
染付けで描かれた玉葱文様はブルー・オニオンと呼ばれ、ヨーロッパで人気のデザインだったそうだ。
磁器の小さな置物(フィギュリン)に「みつかった浮気相手」なんてタイトルの作品があるのもユーモラスでよかった。
磁器で作る宮廷動物園(メナージュリ)のために作製された磁器の動物たちは実際とサイズが違うのでリアルではないのだけど、躍動感があって迫力満点。
特に、巨大なインコの置物に圧倒されてしまった。
スノーボール貼花装飾の、小さな花を一つ一つポットに貼り付ける技術の細かさに感心したのだけれど、私はこういうゴテゴテしたものよりもっとサッパリしたものの方が好き。
流動的な曲線が印象的なウィング・パターン・セルヴィスというアール・ヌーヴォーの作品が特に気に入った。