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ツイッター @hyokofuji ミサ

【映画】コーヒー&シガレッツ

コーヒー&シガレッツ』 2003年 アメリ

タバコとコーヒーは合うらしい。タバコを吸ったことがないから味のことはわからないけど、モノクロで映し出されるタバコとコーヒーの組み合わせは最強。

複数の短編からなるこの作品のどの短編でも、登場人物はタバコとコーヒーが置かれたテーブルを挟んで会話をしている。コーヒーと思いきや中身が紅茶だったりもするのだけれど…。

別々の短編がところどころでつながっていたりするのが面白い。

自分が話している相手の名前を間違えたりコーヒーカップで乾杯をしたりする瞬間が繰り返し描かれるのが印象的だった。目の前にいる相手とコーヒーカップで乾杯したくなる気持ちも、「相手の名前が何であれ構わない」と思える薄情さも、どちらも嘘じゃない。一見矛盾するものが堂々と共存する世界が、哀しくて温かくて居心地のいいものに見えてくる。

私が特に気に入ったのは「いとこ同士」という短編。いとこ同士の女性二人の距離感がたまらなくよかった。この二人、全然タイプが違うし住んでいる世界も違うようなんだけど、基本的にはお互いに好意を持っているように振る舞う。相手にあまり興味を持っていない素振りが見えたり、相手と自分を比べて複雑な気持ちを持っているのが窺えたり、仲がいいとか悪いとか一面的に言ってしまえない不健全な親密さを感じて、見ていて段々ワクワクしてきてしまった。同じ場所に居合わせれば水面下で火花を散らし合わなければならないほど相手を気に食わなく思っている二人だけど、それでもこの部屋を出てしまえば相手のことが頭から消えてしまうんだろうなって最後まで観ていて思った。そういう「他人に対する無責任さ」って、ときに爽快にも思えるから大好き。

いとこかもしれない男性二人が登場する「いとこ同士?」っていう短編もすごく好き。目の前にいる相手に対する好意や信頼の度合いが短時間で変化していくところが面白い。その判断基準が相手の本質的な部分とはまるで関係がないってところも、身も蓋もない感じですごくよかった。

監督:ジム・ジャームッシュ
脚本:ジム・ジャームッシュ