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ツイッター @hyokofuji ミサ

【映画】自転車泥棒

自転車泥棒』 1948年 イタリア

父親が職業安定所で紹介された仕事は自転車がないとできない仕事。数日ぶりに仕事をもらえたのに、運悪く自転車は質に入れてしまったばかり。父と母はその自転車を質屋から取り戻すために家中のシーツを質入れする。

それで何とか取り戻した自転車で父親は初仕事に出かけた。新しい制服に身を包んだ彼からは、仕事をもつ人間の誇りがにじみ出ている。

彼がポスター貼りに集中している時に、壁に立てかけた自転車が盗まれてしまった。届けを出しても警察の対応は冷たくて、何とか自分で自転車を見つけ出さなければならない。友人も手伝ってくれて転売されていないか探しまわるのだけど、なかなか見つからない。

父親の自転車探しに息子も加わる。クタクタになった二人がレストランに入るシーン。「食べて行くには仕事をしないと…」と話しながらお金の計算をする二人がよかった。食べるためにはお金がいるし、お金を稼ぐためには仕事を手に入れないといけない。このうえなくシンプルで力強い価値観。それを幼い子どもと共有できるところがいいなって思った。

切羽詰まった父親が自転車を盗んでしまうラストシーン。彼はその姿を息子には見せまいとしたのだけれど…。

不運に見舞われ追いつめられても家族が食べて行くために力を尽くし続ける父親とそんな父親に寄り添い続ける息子。二人のお互いに対する信頼が窺えるところが好き。複雑な感情を表現する語彙はもたなくても、父親が一身に背負っているものを敏感に感じ取って全身で受け止めているのが、息子の小さな手の動きから伝わってくる。
単純なストーリーだけど、いい映画だった。

監督:ヴィッテリオ・デ・シーカ
脚本:チェーザレ・ザヴァッティーニ スーゾ・チェッキ・ダミーコ
原作:ルイジ・バルトリーニ