There's a place where I can go

ツイッター @hyokofuji ミサ

【映画】127時間

『127時間』 2010年 アメリカ・イギリス

週末にキャニオニングに出かけるのが趣味のアーロン。姉からかかってきた電話にも出ずにいそいそと出発の準備をして飛び出した。彼が向かったのはユタ州のキャニオンランズ国立公園。

スクリーンが縦に三等分されて、別々の映像が流れるのが楽しかった。車を運転する彼や流れる景色、頭上から車を見下ろす構図の映像が流れていく。金曜の夜の高揚感とこれから始まる冒険のワクワク感が伝わってくる。

この週末旅行は楽しいだけのものじゃない。彼は岩場で動けなくなってしまうという人生最大のピンチを迎えるのだ。観る前にそれを知っていた私は、ドキドキしながら彼を見守った。何が失敗の原因になるんだろう。彼はどうやってピンチを切り抜けるのだろう。そんなことを考えながら彼を追っていった。

事故が起こる前は本当に楽しい週末。まず渓谷の景色の素晴らしさに目を奪われてしまった。私もこんなところに行ってみたいなぁ。相当体力がないと難しそうだけど。アーロンは急な坂道を駆け下りたり、岩場を軽々と登っていったり、驚くほど身軽だ。装備も普通のスニーカーにリュックで、こんな格好でこんなに危険なことをして大丈夫なのかな?と心配になってくる。

キャニオニング(キャニオニアリング)というのを私は初めて聞いたのだけど、渓谷沿いを散歩するだけではなく、クライミングや飛び込み、水泳といった要素も取り入れて、積極的に水の流れの中に入っていくスポーツのようだ。

ちょっとやってみたい気もする。彼が途中で出会った女性たちと一緒に地下にできたプールに飛び込むのは気持ちよさそう。かなり危険だけれど。

彼はひょいひょいと岩場を駆けながら音楽を聴いている。街中を走り抜けるような格好で足場の悪いところを自由に飛び回っている彼。そこに突然大きな岩が転がってきて、彼の右腕を挟んでしまった。

「岩場で身動きが取れなくなるって、こういう形でかぁ」と落胆してしまった。この場合だと、自分の腕を切るか岩が何かの拍子に動いてくれるのを待つしかない。苛酷な状況になってしまった。

彼はまず自分を落ち着かせて、リュックの中身を一つずつ出していった。役に立ちそうなものはほとんどない。食料も水もわずか。極限状態に近づいていく彼を見るのは本当に辛かった。ビデオカメラで自分を撮ることで何とか正気を保とうとするのだけれど、時間が経つにつれその内容も狂気じみてくる。今自分に振りかかっている災難を、今までの自分の生き方が引き起こしたものだと考える彼。家族や恋人に対する自分の態度を反省したりもするんだけど、もう二度とみんなに会えないかもしれない。

最終的に彼は生きて帰ることができるんだけど、その後も登山家として活動し続けたことに驚かされた。いままでと違うのはどこに出かける時も予定を記したメモを残すこと。もう二度と危ない場所には近づきたくないって思いそうなものなのに、不思議なものだな。

私はこの映画を観終わってから、これが実話に基づく作品だということを知った。「実話だとしたら、他人を誘って地下の湖に飛び込んだりしたらダメなんじゃないか??」と思ったのだが、そこは事実とは違うらしい。ややこしいな。原作になったアーロン・ラルストンの自伝『奇跡の6日間』も読んでみたい。

監督:ダニー・ボイル

脚本:ダニー・ボイル サイモン・ボーファイ